自分の適量をみつける
最近読んだお勧め小説は 柚木麻子さんのBUTTER
首都圏連続殺人事件(2007~2009)の木島死刑囚から着想されたであろう内容ですが
深く考えさせられ、しかし、読後の方向性は、私は明るいものと感じました。
異性である彼氏や夫、会社の同僚、上司、部下等に、なかなか伝わらなくてもどかしい・・・
しかし、言葉を尽くして伝えたくはない、という、複雑な女性の気持ち、葛藤、悩み、真実が
描かれていて、味わい深い、濃厚な小説です。
私が印象に残ったのは2つ
1つ目は 牝牛のチームビルディング手法がヒエラルキーは作るけど、勝った負けたではないということ
P255~126 主人公の記者の取材先の牧場主が
「牝牛は一度放牧して、自分たちに序列を決めさせると譲り合うようになって秩序が生まれる」「必ずしも強い牛がリーダーになるわけではない」「基準は明確ではなく”サムシング”」
というのを聴いて、主人公は、「一番を決めるために争ってバターになってしまったちびくろ・さんぼの虎たちは雄だ。女は何よりもそのような無益な争いは避けようとする。互いの居場所や個性をさりげなく知らせて、互いが傷つけあわないために秩序とルールを暗黙の上につくるのではないか」と思い巡らす。
そんな、牝牛のチームビルディングはなるほどなあと思った次第。
2つ目はタイトルの通りの「自分の適量を知る」
最近の料理本は、「塩と砂糖を少々」って書くと「少々ってどれくらいかわからない」というクレームがきたりするから、「小さじ1/4」とか書かなきゃいけない、という話があるということを、作中にもあるし、著者の柚木先生はインタビューでも下記の様に語っている。
「自分の適量を知る、ということだと思います。最近は料理のレシピでも、“塩少々”と表記すると“きちんと分量を書いてくれないと失敗するじゃないか”とクレームがくるそうです。でも、失敗を繰り返さないと、自分にとっての適量は分からない。いろいろ食べて試して、何が自分に合うのかを探していくことが大事。それは食だけに限らず、広くライフスタイルについていえるのではないかと思います。人と自分では適量が違うのだから、たとえばファッショニスタは体重をコントロールする努力をしたっていいし、里佳のような人は、メイクはおざなりで夜中に何か食べてもいい。人が良いと言っているから自分もする、というところから自由になれたら。だからこの小説は、自分にとっての適量を見つけて、オリジナルレシピを見つけるまでの話だともいえるんです。」
主人公がボロボロになったときに「助けて」を言える強さをもったこと。
料理なんて全然しなかったの主人公が最後には、昨晩の七面鳥の残りを朝ごはんとして七面鳥せいろはどうかと思いつく。
せいろに関しては父親との苦い思い出があったことも、Try and Learning を重ねていくうちに
気が付いたらふわりと乗り越えて、オリジナルレシピがつくれるようになる様は、
これからの時代を生き抜くヒントになると思います。