リケジョレポート第三弾 龍 尊子さん その2
前回に引き続き 大成建設 龍 尊子さんのインタビューです。
■では、子育てをしながら働く環境についてお聞かせください。
会社の制度は完璧…とは、いいすぎかもしれませんが(笑)豊富なメニューが整っていると思います。
ただ、難しいのは運用面だと感じます。子供が熱を出して、帰らざるを得なくなった場合は、
ご多分に漏れず、その仕事を誰かが引き継がねばなりません。
個々人が余裕がない中で、チームでカバーするしかない。
私自身は、子育ての忙しい頃は、上司やチームのメンバーに恵まれていました。
さらに、仕事自体も自分で管理できる内容であり、
会議なども早めであればある程度コントロールできました。
しかし、現場や大きな組織やプロジェクトの一員として働く場合は、
自分自身で仕事の内容やスケジュールをコントロールすることも難しいので、大変だと思います。
ですので、助けてくれる人とは、密にコミュニケーションを取る、
自分の仕事を見えるようにしておく、ボールを抱えすぎない努力、が必要です。
また、上司からメンバーに一言言ってもらうことも必要と感じています。
本人も仕事を残して帰るのはストレスになる場合がありますので、
ストレスにならないよう上司が一言メンバーに声掛けをしてくれることは
大きな支援になります。
■周囲にいる子育て中のお母さん社員に対するアドバイスをいただけますか?
「早め早めに情報を出しておく」ことで、周囲を困らせない状況をつくっておくことです。また感謝の気持ちを、ちゃんと伝えることが大切だと思います。
■長く建設業界で働く、活躍する秘訣は?
「自ら積極的に情報開示すること」
「感謝を伝えること」
「社外にもチャネルを作り、先輩の話を聴く」
…の3つでしょうか。
管理職として更に活躍するためには、自分にしかない強みを持つことが必要と感じています。
強みは人によって様々ですが、男性社員にも「あの人はすごいよ」と
思われる、誰もが認めるようなことを持つことが大切です。
―なるほど。他者に認めてもらえる強みをもつということは、客観的視点で自分の強みを認識し、伸ばすことが大切ですね。
■では、ここで、プライベートにも踏み込ませていただきます。
ズバリ、ご主人はどんな方ですか?
大成建設で建築の設計の仕事をしています。出会いは、会社のスキー部です。
主人の父はいわゆる転勤族、母は専業主婦、といった「昭和の高度経済成長を支えた典型」のような家族です。
一方、私は母が教師をしていたため、『鍵っ子』として育ちました。
そのため、「帰った時には電気がついていてほしい」という結婚当初の主人の発言には少し驚きました。
そうですね、結婚する際、私が主人に伝えたことは「1つ」
土木の仕事は続けたいので、もし夫が転勤することになった場合は、
転勤先で私の仕事を見つけることに協力してほしい、ということ。
建設業に従事すると転勤も多いため、離ればなれで暮らす夫婦もいらっしゃいますが、
幸い、共にずっと首都圏での転勤だったので、これまでは離れて住むことなく、ずっと一緒に暮らしています。
同じ建設業、同じ会社で働くこともあり、忙しい時への理解はあり、不満も言われませんでした。
夫は学生時代に山岳部に所属していたため、食事が作れるのですが、そのことには結婚後に気付きました。
今でも料理の腕は私より上で、時々食事も娘のお弁当も作ってくれます
家庭内で仕事の話はあまりしません。同業の夫でよかったと思うのは、お互いの仕事の流れ、組織のことが分かり、辛い時期が理解し合えるのではないか、という点です。
ただ、社内ですとお互いの知り合いも多いため、食堂などで気が抜けないのも事実です(笑)
■お子さんを妊娠・出産した時のことについて教えてください。
私は入社5年目に結婚、9年目に出産し、
今は中学1年生の女の子が一人います。
特にキャリア・ライフプランを計画的に考えたわけではなく、
自然と授かったことは嬉しいことでした。
しかし、事情があり妊娠期間は約半年間、入院生活を送りました。
そんな私に対して、当時の上司や部署のメンバーは「安静にしてね、待ってるよ」と常に温かく声をかけてくれ、今でも心から感謝しています。
ですので、復帰して会社に貢献したい、と自然と思うようになり、
復帰後に、設計から営業に異動が決まった際も、新たな気持ちで臨むことができました。
■ご主人の子育てや家事の関わり方についてお聞かせください。
食事を作ってくれたり、お弁当を作ってくれたり、非常に協力してくれています。
娘も主人の作った食事が大好きです。
娘が小さい頃は、送り迎えは全て私がしていました。
特に小さいころはどうしても、母親に比べ父親との距離が遠くなってしまうもの。
そこで、娘の様子をメールで毎日主人に送っていました。
それによって主人も娘を近くに感じられていたかもしれません。
娘が言葉を発するようになってからは、主人との距離もぐっと縮まりました。
今では、主人と私の共通の趣味であるスキーに家族3人で楽しむのが何よりの幸せです。
■では、またお仕事の方に質問を戻させていただきます。総合職に登用された経緯をお聞かせください。
専任職でも、やりたいことはやらせてもらえますが、総合職で肩書をもって社外に出ると仕事の幅がまったく異なるだろうと思いました。
出られる会議も違う、入ってくる情報も違うのです。
そこで、総合職へのチャレンジを決めました。
特に営業では、社内、社外に対して組織の持つ力を引き出して出す成果は、
総合職登用以前より、遥かに大きいと痛感しています。
総合職に登用されてからは、社内・社外からの見られ方が変わったと感じています。
より仕事がしやすくなり、成果が出しやすくなりました。
果たすべき責任も大きくなり、苦労することもありますが、プロジェクトが上手くいったときには、働き甲斐を感じます
■今後はどのようなお仕事に挑戦したいですか?
子供の頃 土木の世界に興味を持ったきっかけである橋に携わっていきたいです。
老朽化した橋をどうしていくか、メンテナンスも含めて営業の立場として携わっていきたいと考えています。
点検を効率的に行う、補修しづらいところをどうするか、などの課題に取り組み、インフラが健全な状態で使われるような仕組みを作りたいと思います。
女性の技術者の視点が加わることで、維持管理を、より効率的にしていけると感じています。
また「土木の魅力」を情報発信することも今後より積極的に行いたいです。
私たちのつくったインフラがどう社会の役に立つのかをしっかり発信していきたいですし、それが将来的にはいわゆる「ドボジョ」を増やすことや、土木の将来を担う人の育成にもつながります。これから仕事を選ぶ世代にもっと土木を理解をしてほしい
これらが、今後、挑戦したいことです。
「土木技術者女性の会で参加した女子中高生夏の学校2013」
■現在 土木で働いている女性へのメッセージをお願いします
「会社で長く働き続けてほしい」ということです。
応援してくれる人は必ず周りに沢山いるので、一人で悩まずに、いろんな方とコミュニケーションをとって情報共有していくことで、先にいろいろなものが見えてきます。
そのためにも、社内・社外の女性のネット―ワークを活用してください。
私たち大成建設では非公式の女性ネットワークがいくつかあります。
1つは、土木の女性新入社員を集めての歓迎会です。
2008年から開催していますが、2年目以上の女性社員も首都圏から集まり、ネットワークができ始めています。
もう1つはママランチです。
建築の設計の方が最初に声をかけ、20名程度 数か月に1回程度の頻度でスタートしましたが、
現在は複数の職種、70名程度の規模になっています。
話題は多岐に渡り、例えば「PTAの役員は、いつ頃、どのような仕事を務めるとよいのか」などの情報交換もしています。
また、この会をきっかけに、人事部に働きかけをして、英会話教室の昼休み開催が実現されました。
行動力もある素晴らしい皆さんで良い刺激を受けています。
■では、土木に限らず、建設業で働く皆さんへのメッセージもお願いします。
建設業界は女性の進出が遅れていると言われていましたが、今は環境や制度面では、それほど遅れてはいないと思います。
ですが、まだまだ女性は少ないと感じています。
女性が長く働くようになる為には、今後は「男性の働き方も多様化」するような動きも必要です。
建設業界自体の魅力を高め、将来、インフラ整備を担う男性の皆さんにとっても魅力的にな業界になるよう男性の働き方の多様化を認めていけるようになるべきです。
男性の育休など制度は整いつつありますが、運用面でいうとまだ難しい、というのが現状です。
男性側の意識も含めて変えていきたいです。
特に介護も視野に入れると、女性だけが介護休暇を取得するのではなく
男性も介護休暇を取得しやすくおくことは必須です。
せっかくの人材を大切にしていくためにもあらゆる制約のある方をフォローする考え方が必要だと感じています。
―まだまだ女性が少ないので女性を増やす!という活動と共に、
今のマジョリティである男性の働き方の多様性も認める環境づくりが
必要だということですね。 龍さん、ありがとうございました。
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龍さんのお話しを聴いて、本当にキャリアとは、外的なことだけでなく
自分自身の生き方といった内的なことも幾重にも絡み合い重なりあって
人ぞれぞれ輝くストーリーがあるなあということを実感しました。
しばらく、ドボジョシリーズが続きます!皆様お楽しみに