男尊女子
酒井順子さんの最新エッセイ「男尊女子」は
言わずもがな「男尊女卑」をもじった造語をタイトルとしている。
タイトルだけを見て私が想像した「男尊女子」の意味は「男尊女卑」同様
「男性を重くみて、女性を軽んじること。また、そのような考え方や風習」
を指し、「女卑」では流石にこの時代にそぐわないから
「女子(オンナコドモ・とるにたりない意や、足手まといになる意で引き合いに出されることが多い)」
として顕しているのかと思ったら、然に非ず。
『男尊女子』とは「男を立てる」「男を支える」ことを是とする女性たちを指す。
私は筆者が「マーガレット酒井」として雑誌「Olieve」で連載しているときから
彼女の文章のファンである。
1966年生まれの彼女と1968年生まれの私は生きる時代が一緒でもあることから
彼女が伝える「男尊女子」の事例は全て「あるあるある~」の連続で非常に面白かった。
特に「無知のフリ」の段で、紫式部も世を“上手く”渡るためには
「漢字など“一”も書けません」風に装う必要があり、実践していたことが書いてあり
ビックリしました
しかし、清少納言は「私は、漢詩のこ~んな難しいのも知ってるけど~」って感じで
無邪気に知識をひけらかし、また、それを支持する男性層もいることを
「苦々しい」・・・と思わず愚痴ってしまった日記が1000年以上経っても読み継がれ
自国のジェンダーを論ずるときに引き合いに出されているとは紫式部も感慨深いだろうと思う。
で、この本は自分の中の「男尊女子」度を知る、自己理解にとてもよく作用します。
負け犬の時も「未婚、子ナシ、30代以上の女性」の当事者であった筆者が自虐的に
これを書いたところが肝であったのに、爆発的なヒットにより、当事者でない者が
他者を「負け犬」と揶揄し、日本のあちこちでハラスメントが呼び起こされ
傷ついた人がいることをこの本で筆者も忸怩たる思いとして書いていました。
「男尊女子」も当事者が使うからこそ真の意味がある。
自虐的意味を含むので、活字としては書かないけれど見えなくともその最後には(笑)がついている。
と酒井さんもおっしゃっています。
だからこそ、自分以外の人からあなたって「男尊女子」要素高いよね?的に言われたら、「はぁ?だから何だっていうのかしら?!」という反応になること請け合いです。
相手には「男尊女子(笑)」要素高いよね?と伝わるからです。
「負け犬(笑)」同様「Youメッセージ」で他者に向けて話題にするもんじゃない。
取り扱い注意言語なのです。
自分の中の「男尊女子」要素を理解し、自分の中の「男尊女子」とはに向き合うのは楽しいと思います。
他者と論じるなら自分の要素と社会の中の「男尊女子現象」を語りあうのなら「アリ」だと思います。
酒井さんは週刊現代のインタビューで
「封建時代から何百年もの間、日本には『女は基本、奴隷』という感覚があったわけで現代になっても“男が先で女は後”という癖が抜けない女性が多い。人によって濃淡はありますが、男尊女子のエキスが1滴も身体に入って少ない人はいないのではないかと思います。」と語っています。
「潜在的に身体に染み付いた“男尊女卑”の感覚を自覚するところから始まるのかもしれません」というくだりにもとても賛成。女性活躍推進のカギの一つは、自己理解にあるし、自分の目指したいGOALに行くために自分の中の「男尊女子」とどのように向き合うかは大事です。
ちなみに、大分薄いですが(笑)私も男尊女子部分は「あるなあ~。」と自覚出来て楽しかったです。
興味がある人はご一読を・・・