リケジョレポート第五弾 堀川真加さん(その2)

前回に引き続き、前田建設工業の堀川真加さんです
本日は両立で大切にしていること、今後のキャリアビジョンについてお聞きします。
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■お仕事をされていて、結婚・出産のライフイベントの経験が生かされている瞬間はありますか?
怒る沸点が変わり、イライラしなくなりました(笑)。
何かできなくても、「次頑張ればいいじゃん」と、思えるようになり、心が大人になったと感じます。
子どもを産む前は、入社したころから「同期の男性には負けませんよ」という気持ちが大きいところもあったのですが、今は目先の勝ち負けではなく、別の視点で考えられるようになりました。
■別の視点とは、どのような視点ですか?
例えば、出産・育児で2年間 仕事を離れたわけですが、仕事を離れている事実は変えられないので、同期と云々というよりも、自分は2学年下の後輩と同じだと考えることで、気が楽になったのです。
■周囲の人の評価も変わりましたよね?
現場時代は尖っていたので、そんな私と関わっていた人たちからは、「まだ、猫かぶっているだろう」と思われているのでは(笑)。
■堀川さん自身、女性が長く働く秘訣はどんなことだと思いますか?
周囲にいる働く女性を見ていて思うのは、個々人が努力している、ということです。「自ら目標を決めて、着実に実行していく姿勢」が大切だと思います。
■姿勢とは、具体的にどんなものでしょう?
会社の制度や運用は改訂を重ね、年々、子育てしながらも働きやすい環境になっていることは間違いないです。だからこそ、制度を活用する女性たちは、そこに甘んじてはいけないと思うし、「制約がある中でも、頑張ります」という姿勢をいかに見せ、もちろん「成果」を出していくことが大切だと思います。
■どうしたら、そのような成果を出せる人になれると思いますか?
私の場合は、それができる原動力として、純粋に「仕事が楽しい」のだと思います。たまに「子供がいなかったら何時まででも仕事がしたい」と思う時もあるくらいです(笑)。
現在は、仕事・家事・育児がどれだけできているか点数で表すと、
・仕事:50~60%
・家:50%
・子育て:50%
仕事、家事、育児、それぞれ専業の方に比べると、どうしても物足りなくなります。
しかし、「50+50+50で全体は100超えているからいいじゃん」と自分で割り切ることができるようになり、気が楽になりました。
■よく私も研修で子供が小さいうちは、一つ一つに100点、ではなくトータルで100点でいいじゃない?と自分を赦しましょうと伝えています。堀川さんはどのようにしてそのような考え方にシフトできましたか?

その割り切りができるようになったのは、働く母親としての経験値が積みあがって5年が経ってからです。ここまでくるのは簡単ではなかったですが、だからこそ後輩たちにも、その考え方を継承できる喜びがあります。
■ご自身が、今後、より一層活躍していくために大切なことはどんなことですか?
現在の仕事を通じて、普通の職員では携われないことをしている実感があります。別業界と仕事をすることで知識や視野が広がったり、今までの現場の仕事とは異なるスキルを身に付けることができ、バランスよく融通の効く人間になれたと感じています。広く知識やスキルを身に付けることが、自分自身の生きる術だと思うし、存在価値につながっていると思います
■今後のキャリアビジョン、積みたい経験をお聞かせください。
まずは今の仕事を一生懸命やりたいです。今やっている仕事に一生懸命向き合うことで、自然と次が見えてくると思うので・・・。子供2人も成人まで育て上げ、定年まで働くことが今の目標です。
■ご主人ともそのような今後のキャリアの話はされますか?
話はしますね!主人は「人生は楽しく」という考えなので、私が転勤になったら、「一緒に行く!」というタイプです。もし何かあり、どちらかが家庭に軸足を置く必要が出た場合、主人が辞める可能性もあると感じています。
主人は仕事の特性上、「働く現場はどこにでもある」と考えているのがその理由です。私の都合に柔軟に対応してくれるので、とても感謝しています。
■自分たちはどんな夫婦だと思いますか?
私はどちらかというと、目の前の仕事に対してストイックに考えがちな方なので、真逆な考えを持ち、広い捉え方を持つ主人と結婚したのは、とても自然なことだったんです。子どもたちからは「厳しいお母さん、楽しいお父さん」と見えていると思います。
■なぜご主人はフラットで柔軟な考え方を持っていると思いますか?
心が少年なんだと思います(笑)。
仕事にそれほど執着しておらず、「仕事は生きていくためにお金を稼ぐ手段」と良い意味で割り切っているからだと思います。
■ご自身が子供を産むタイミングについてはどう考えていましたか?
その人が、欲しいと思うタイミングがベストなんだと思います。よく「迷惑をかけない時期に」という考えを耳にもしますが、迷惑をかけない時期、というのは来ないのが現実です。
自分にまつわることは自分で采配できないことも多いので、産める時に産むのががよいと思います。
■育児をしながらうまく仕事をするために、意識して実践されていることはありますか?
最低限を効率良くやることです
 絶対やらきゃいけないことはちゃんとやる。そのためにも、優先順位がつけられることは大切で、子供の頃から、時間を有効に使ったり、物事をする順番を考えたり、タイムマネジメントするのが好きだったので、楽しいです
■そんな堀川さんをつくったご家庭は、どのような環境だったのでしょうか?
母は専業主婦、兄は比較的のんびり、ゆっくりな性格です。怒られている兄を見て、学んだのかもしれないですね~。子供の頃は「なんでお兄ちゃんはこんなにのんびりしているのか?」と不思議に感じていました(笑)。
■ほかにも育児と仕事の両立で大切にしていることはありますか?
情報の共有です。自分の仕事は、誰かに引き継ぐ必要ができたときに、いつ誰が見ても、どうしたらいいかが分かるようにしています。
それは、家庭の中でも同じで、子供の保育園も持ち物であったり、今日やるべきことであったり、家族で共有できるように紙に書いて貼る、つまり「見える化」しています。今、4歳、2歳の娘たちも保育園から帰ると自分で着替え、洗濯の仕分けをするようになりました。
子供たちのためにも、自分のためにも、「自分のことは自分でやる」を教えています
■4歳と2歳ですごいですね!!自立型人材の育成にコツはありますか?
運営を決めて、組織を動かす、という意味では、会社の仕事も、家庭のことも、うまくまわすコツは「見える化」で共通していると感じます。
「自分のことは自分でやる」子供に育てるために、忙しい時でも、効率重視で家事を全て一人でこなさず、手際が悪くも料理を手伝ってくれようとする娘たちを尊重する努力をしています。正直 イライラすることもありますが、10年先を考えると、目先のラクよりも、今の我慢を取るようにしています。10年後には、仕事から帰宅すると、娘たちが夕飯を作って待ってくれているのが理想なので、それに向かってがんばってます(笑)。
■普通であれば、「目先のラク」を優先してしまいますが、どうして堀川さんは先を考えて、イライラを抑えられる力があるのでしょうか?
昔、家庭教師をしていて、かみ砕いて教えること、そして相手がそれを吸収するのを見ることの楽しさを感じました
社会人になって土木の現場にいるときも、後輩の男性を育てて教えること、そしてその後輩が一人前になる姿を見るのがとても楽しかったのです。
なので、根本的に人に対して教えること、成長を見守ることが好きなのだと思います。
自分が新人時代に指導を受けているときも、人による教え方の違いには興味があったし、
背景や根本を教えてくれる人はありがたいな、と感じていていつかはそれをできる人になりたいと思っていました。
女性の方が、整理して教えるということが得意かもしれないと感じます。
■建設業界で働く後輩女性へのメッセージをお聞かせください
>視野を広く持ってほしいです。
時には、目の前の仕事が合わないと思ったり、ライフイベントにより継続することが難しくなったりするタイミングもあると思います。しかし、いろんなタイプの業務内容、体制があるので、その中で広く見て自分に合うものを選択する努力をしてほしいです。そうすることで、道はきっと拓けていくと思います
■視野を広くするためにどうすればよいと思いますか?
若いうちに異動を経験することではないでしょうか。「この職場、この環境で成果が出ない、ダメだから、もう私はダメだ」とならないようにいろんな部署・環境に異動する努力(希望を出す)をする。これによって、いろんな仕事の可能性も出てくるはずです。
■その他伝えたいことはありますか?
時短勤務で働いている女性社員は、仕事に全力投球できずに「やりきれていない感」を感じて周囲に恐縮していると思います。一方、働き盛りの若い女性から見ると、時短勤務の女性ばかり優遇されて、自分はいつも先輩のフォローばかりさせられていると不公平感を持つことがあるかもしれない・・・。私が仕事で何とか成果を出せているのも、手伝ってくれる後輩のおかげです。ですから会社には、縁の下で頑張っている若い女性たち、後輩たちにも目を向け、男性同様に頑張っている彼女たちの努力をきちんと評価してほしいと思います。
堀川さんの、自分へのハードルが高い故の発言ですね。
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優秀だからこそ、自分に対する目標設定が高い。
堀川さんのように時間の制約がある中で高い成果を出せること、
アウトプットを出すことに対する精度が高いことは
周りの男性たちにもプレッシャーであり、良い影響を与えている。
長い時間をかけなくても仕事はできる、という実績を作ってくれている

と、最後に、堀川さんの現場での元先輩で、このインタビューに同席してくださった広報の堂森さんのコメントもいただきました。
今日はたくさんの学びをありがとうございました!